交通事故の治療関係費として、整骨院や接骨院での施術費は請求できるのか

交通事故に遭い、頸椎捻挫、腰椎捻挫等の傷害を負った場合、整骨院や接骨院で柔道整復師の施術を受けることがあります。

では、交通事故の治療関係費として、整骨院や接骨院での施術費は請求できるのでしょうか。

当該施術費が、症状固定までに行われた「必要かつ相当な施術行為」の費用であると認められる場合には、交通事故の治療関係費に該当する損害と認められ、当該施術費を請求できます。

以下においては、治療関係費の内容、「必要かつ相当な施術行為」の内容を概観した上、
当該施術費を請求できることについて、説明することとします。

治療関係費の内容

治療関係費は、治療費、入院費等のほか、診断書作成費等の文書料があります。

治療関係費の範囲は、被害者が交通事故により受けた傷害の具体的な内容・程度に照らして、症状が固定するまでに行われた「必要かつ相当な治療行為」の費用と考えられています。

そして、ここでいう「必要かつ相当な治療行為」の費用とは、一般的に、医学的見地からみて当該傷害の治療として必要性及び相当性が認められる治療行為であり、かつ、その報酬額も社会一般の水準と比較して妥当なものをいうとされています。

そこで、整骨院や接骨院での施術費について考えてみますと、施術費についても、受傷内容や程度に照らし、症状固定までに行われた「必要かつ相当な施術行為」の費用であると認められる場合に、施術費が、交通事故の治療関係費に該当する損害と認められることになります。

まず、施術費の請求が認められるためには、施術が症状固定までに行われたこと、施術録に記載された施術が実際に行われたことが、当然の前提とされます。

以下では、この前提は充足されているものとします。

次に、被害者の受傷内容や程度に照らし、「必要かつ相当な施術行為」であるといえるかどうかが明らかにされなければなりません。下記において、この点を検討することとします。

「必要かつ相当な施術行為」の内容

必要かつ相当な施術行為は、必要な施術行為と相当な施術行為の2つに分けられます。

そして、それぞれの内容は、下記のとおりです(なお、赤い本2018年版下巻27頁「整骨院における施術費について」参照)。

必要な施術行為

必要な施術行為とは、治療として必要性が認められる施術行為であること、ということです。

治療として必要性が認められる施術行為としては、①身体が施術の必要がある状態にあったこと(狭義の「施術の必要性」)、➁施術を行った結果、症状の緩和が具体的に認められたこと(施術の有効性)が必要です。

相当な施術行為

相当な施術行為とは、治療として相当性が認められる施術行為であること及びその報酬額も社会一般の水準と比較して妥当なものであること、ということです。

治療として相当性が認められる施術行為としては、➂受傷内容・程度や症状に照らし、施術が過剰・濃厚に行われておらず、症状と一致した部位について、適正な内容として行われていること(施術内容の合理性)、④受傷の内容、治療経過、疼痛の内容、施術の内容及びその効果の程度等から、施術を継続する期間が相当であること(施術期間の相当性)、が必要です。

そして、相当な施術行為といえるためには、➄報酬金額が社会一般の水準と比較して妥当なものであること(施術費の相当性)も必要です。

医師の指示の有無

施術費が認められるためには、医師の指示があることが必要かどうかについて検討します。

医師の指示がある場合

整骨院や接骨院での施術を受けるようにとの医師の指示は、上記の①➁の要素を推認させる事情にすぎません。

したがって、医師の指示があれば、当然に施術費が損害となるわけではなく、さらに、上記の➂ないし➄の要素の吟味が必要になります。

医師の指示がない場合

医師の指示がない場合には、上記の①➁の要素が推認されないにすぎません。したがって、医師の指示がない場合は、上記の①ないし➄の要素の吟味が必要になります。

脱臼又は骨折の場合

整骨院や接骨院で施術を行う柔道整復師については、柔道整復師法17条で「柔道整復師は、医師の同意を得た場合のほかは、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない。

ただし、応急手当をする場合は、この限りでない。」と規定されています。

この規定から、交通事故の被害者の怪我が脱臼、骨折の場合については、応急手当の場合を除き、医師が患者を診察した上で同意が与えられることが必要と考えられています。

そして、医師の同意のないことは、上記の①➁の要素がないことを強く推認させる事情になり、施術費は原則として損害とは認められないことになります。

小括

施術費が「必要かつ相当な施術行為」の費用であると認められるためには、上記の①~➄の要素が具体的に立証される必要があります。

整骨院や接骨院の施術証明書や施術費明細書のほか、医療機関の経過診断書、医師の意見書、医療照会、施術の有効性に関する被害者の陳述書等での立証が考えられます。

以上のように、上記の①ないし➄の要素を総合的に考慮し、施術費が「必要かつ相当な施術行為」の費用であると認められる場合には、その費用が、交通事故の損害(全額かどうかはともかく)と認められることになります。したがって、当該施術費を請求できるのです。

なお、裁判例を概観しますと、「医師から接骨院への通院の指示や同意があったとは認められないこと、接骨院での施術を受けなければ改善しない症状であったとは認め難く、接骨院での施術の必要性が認められないことを理由に、施術費について、事故と相当因果関係のある損害とは認められない」(福岡高判平30.9.28自保ジ2036・92)、「医師は整骨院での施術を容認していたにすぎないこと、整骨院での施術が有効であったことは認められるものの、その施術を行うことの必要性、合理性、相当性が認められないことを理由に、施術費について、損害として加害者に負担させるのは相当でない」(東京地判平14.2.22判時1791・81)とする裁判例がある一方、医師の指示の有無にかかわらず、上記の①ないし➄の要素を検討するなどして、施術費の全額又はその一部を認容する裁判例もあります(東京地判平25.8.9自保ジ1910・64、神戸地判平26.8.20交民47・4・981、大阪地判平26.9.9交民47・5・1118、横浜地判平29.5.15自保ジ2003・126、東京地判平29.7.18自保ジ2021・33、横浜地判平30.2.28自保ジ2022・163、京都地判平30.7.19交民51・4・885など)。

まとめ

以上から明らかなように、交通事故に遭って傷害を負い、整骨院や接骨院で施術を受けた場合、上記の①ないし➄の要素を総合的に考慮し、施術費が「必要かつ相当な施術行為」の費用であると認められる場合には、その費用が、交通事故の損害(全額かどうかはともかく)と認められることになります。

上記の施術費の請求をお考えの方は、是非当事務所にご相談ください。

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