事故の加害者が任意保険に加入していない場合でも賠償金を得ることができるのか

代表弁護士 津田 岳宏 (つだ たかひろ)

交通事故に遭った場合、被害者は加害者に対して損害賠償を請求できます。

そして、一般的には、加害者が加入している任意保険会社の担当者と話し合って賠償額が決まるのがほとんどのケースと思われます。

では、事故の加害者が任意保険に加入していない場合でも賠償金を得ることができるのでしょうか。

被害者は、加害者の自賠責保険に請求する、被害者の任意保険を利用する、労災保険を利用する、政府保障事業を利用する、加害者に請求するなどして、賠償金を得ることができます。

以下においては、順次、これらの請求や利用について、説明することとします。

加害者の自賠責保険に請求

加害者が任意保険に加入していない場合、自賠責保険から補償を受けることができます。

しかし、自賠責保険は被害者保護のための強制保険であるため、人損が対象であり、物損は対象となりません。

そして、被害者保護の最低限の損害賠償を保障するため、全損害をカバーしているわけではなく、補償の範囲には制限があります。

補償の範囲

傷害の場合

治療費、付添看護費(12歳以下の子供の近親者付添人は1日につき4300円)、入院雑費(1日につき1100円)、休業損害(1日につき原則6100円)、入通院慰謝料(1日につき4300円)などの損害が、120万円を上限として支払われます。

※自賠責保険の支払基準が改正され、令和2年4月1日以降に発生した入院慰謝料・休業損害については、新基準が適用されます。令和2年4月1日以前に発生した入院慰謝料・休業損害については、下記です。

  • 入院慰謝料:1日につき4200円
  • 休業損害:1日につき原則5700円

後遺障害の場合

後遺障害が認定された場合、後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料などの損害が、後遺障害の等級に応じて、4000万円(うち、慰謝料分は1650万円で、被扶養者がいる場合は増額。常時要介護1級)~75万円(うち慰謝料分は32万円。14級)の範囲で支払われます。

※自賠責保険の支払基準が改正され、令和2年4月1日以降に発生した葬儀費・死亡被害者本人の慰謝料・後遺障害による損害の保険金等の支払いについては、新基準が適用されます。令和2年4月1日以前に発生した葬儀費・死亡被害者本人の慰謝料については、下記です。

  • 葬儀費:原則60万円。資料により60万円を超えることが明らかな場合は、上限100万円まで申請が可能
  • 死亡被害者本人の慰謝料:350万円
  • 後遺障害による損害の保険金等の支払い:1600万円(1800万円)※括弧内は、被扶養者がいる場合

死亡の場合の例

葬儀費(原則100万円)、逸失利益、死亡被害者本人の慰謝料(400万円)、遺族の慰謝料(請求権者1名の場合:550万円、同2名の場合:650万円、同3名以上の場合:750万円。死亡被害者に被扶養者がいる場合:さらに200万円を加算)などの損害が、3000万円を上限として支払われます。

被害者の任意保険を利用

被害者が加入する任意保険に「人身傷害補償保険」、「搭乗者傷害保険」、「無保険車傷害保険」が付いていれば、補償を受けることができます。

人身傷害保険

交通事故により、契約者やその家族、又は契約車両の搭乗者が死傷した場合に、過失割合に関係なく、実際の損害を補償する保険です。

搭乗者傷害保険

交通事故により、契約車両の搭乗者が死傷した場合に、契約した定額を補償する保険です。

無保険車傷害保険

自動車保険に加入していない無保険車両や、保険に加入していても補償内容が不十分な車両との交通事故により、契約車両の搭乗者が死亡し又は後遺障害を負った場合に、損害を補償する保険です。

車両保険

契約車両が損傷した場合に、車両保険金額(時価額)を限度に、損害を補償する保険です。

労災保険を利用

交通事故が被害者の業務遂行中又は通勤中の場合は、労災保険の適用があります。

所轄の労働基準監督署に第三者行為災害届を提出すれば補償を受けられます。

労災保険と自賠責保険の両方を利用できる場合、行政通達は原則として自賠責保険の支払を先行させることとされていますが(昭41.12.16基発1305号)、強制力はなく、被害者は労災保険給付を先行して受領することもできます。

ただし、同一の事由については、労災保険と自賠責保険のどちらかからしか支払を受けることができません。

自賠責保険と労災保険では、診療報酬や補償額が異なります。

自賠責保険では、傷害に関する損害の保険金額の上限が120万円と定められているため、自由診療(診療報酬点数が1点20~30円と設定)ではすぐに上限に達してしまうおそれがあります。

しかし、労災保険では同点数が1点12円で治療費の上限がないため、両者には大きな違いがあります。

被害者は、どちらを選択するかはケース・バイ・ケースですが、先に自賠責保険を利用すれば、治療中に補償上限に達してしまうこともあり、労災保険を上手に使うことで十分な補償を受けられることがあります。

また、労災保険では、被害者に過失がある場合でも、過失相殺はされません。

労災保険では、療養(補償)給付(治療費)、休業(補償)給付(休業損害)、障害(補償)年金(1~7級の後遺障害の場合)、障害(補償)一時金(8~14級の後遺障害の場合)、傷病(補償)年金(療養開始後1年6か月経過しても治癒していないなどの場合)、介護(補償)給付(要介護状態の場合)、葬祭料(葬祭給付)、遺族(補償)年金(又は遺族(補償)一時金)が支給されます。

他方で、労災保険の給付内容のうち、休業特別支給金、障害特別支給金、遺族特別支給金等の各種特別支給金は、労災保険から給付を受けていても、これらは損害の塡補を目的とするものでもないため、加害者に対する請求では控除(損益相殺)されません(平8.2.23民集50・2・249等)。

政府保障事業を利用

加害者が任意保険にも自賠責保険にも加入していなかった場合には、被害者は政府保障事業を利用して、国から補償を受けることができます。

もっとも、政府の保障事業は最終的な被害者救済措置であるため、健康保険、労災保険等の社会保険を利用できる場合は、まずそれらを先に使用すべきものとされています。

この政府保障事業からの損害塡補金の支払限度額は、自賠責保険金の限度額と同じですが、健康保険等の社会保険から給付を受けるべき場合には、その給付額を控除した額が支払限度額となります。

また、加害者から損害賠償の支払を受けた場合も、その金額分については、塡補金の支払はなされません。

加害者に請求

上記の請求や利用で賠償金が得られない場合には、加害者に対し、直接賠償金を請求するしかありません。

もちろん、加害者に財産がある場合には、法的手続を踏めば、当該財産から一定の支払を受けることできます。

しかし、任意保険にさえ加入していないような加害者から、賠償金を得ることを期待するのは難しいといえます。

まとめ

交通事故に遭った場合、加害者が任意保険に加入していなければ、被害者は、加害者の自賠責保険に請求する、被害者の任意保険を利用する、労災保険を利用する、政府保障事業を利用する、加害者に請求するなどして、賠償金を得ることができます。

しかし、被害者にとって、保険会社や加害者との交渉は並大抵のことではありません。

まして、加害者が任意保険に加入していないとすれば、なおさらのことです。

当事務所には、交通事故に精通している弁護士が揃っています。

是非、当事務所にご相談ください。

代表弁護士 津田岳宏(つだたかひろ)/昭和54年生/京都女子大学付属小学校卒業/東大寺学園中・高等学校卒業/京都大学経済学部卒業/平成19年9月弁護士登録/平成26年6月京都グリーン法律事務所を設立

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