交通事故の過失割合はどのように決定されるのか

交通事故の被害者が損害賠償請求をするにあたり、その「過失割合」が問題となるときがあります。
すなわち、交通事故の被害者に落ち度が全くないケース(青信号で横断歩道を渡っていた歩行者を信号無視の車がはねた場合など)を除き、大抵のケースでは被害者にも何らかの落ち度があることから、それを被害者側の「過失」として、被害者の損害賠償金から一定割合が差し引かれることになります。

過失割合は誰がどのように決定するのか

東京地方裁判所民事第27部(交通部)は、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」というタイトルの書籍を昭和50年から継続的に公刊し、交通事故訴訟における被害者の過失相殺率の類型化に努めてきました。
なお、東京地裁交通部が上記書籍で示しているのは、あくまでも被害者の過失相殺率です。

つまり、上記書籍は、四輪車対歩行者の事故で歩行者の過失相殺率が10%のケースでは、歩行者が四輪車に対して90%の損害賠償金(治療費など)を請求することができると述べているにとどまり、四輪車が歩行者に対して10%の損害賠償金(車の修理代など)を請求することができるとは述べていないことに注意しなければなりません(これが過失割合だと、四輪車は歩行者に対して10%の損害賠償金を請求できます)。
被害者の過失割合(正確には過失相殺率)は、裁判所が判決で示す形で決定されますが、その際、裁判所はほとんどのケースで上記書籍の記載に基づいて判断をします。

過失割合的に被害者でも損害賠償金を支払うケースもある

四輪車対歩行者の事故で、四輪車に1000万円の損害が発生したケースで考えてみます(冷凍車の冷凍機能が壊れて荷物が溶けてしまった場合などでは損害額が極めて多額になる可能性があります)。
歩行者が青点滅信号で横断歩道の横断を開始し、赤信号で進入した四輪車と横断歩道上で衝突したとき、歩行者の過失割合(正確には過失相殺率)は10%です。
したがって、歩行者に治療費その他で100万円の損害が発生したとき、歩行者は、四輪車に対し、90万円の損害賠償金を請求することができます。

これに対し、四輪車は、歩行者に対し、上記書籍の過失相殺率の記載を根拠として損害額1000万円の10%である100万円を請求することはできません。なぜなら、この10%は過失割合ではなく、歩行者が歩行者自身の損害賠償請求をする際の減額率(過失相殺率)を意味するものだからです。
とはいえ、現実の裁判実務では、過失相殺率は過失割合として事実上機能しています。裁判官が和解を勧めたり判決を書いたりする際に何らかの拠り所がほしいと感じるときに、裁判実務において絶大な権威性をもつ上記書籍の記載に目が向いてしまうからかもしれません。

そのため、実務的には、双方の損害額を合算し(上記のケースでは1100万円)、このうち四輪車が90%(990万円)を負担し、歩行者が10%(110万円)を負担するという和解がなされることがほとんどであり、判決でも四輪車の損害のうち10%を歩行者に負担させるように命じられることがほとんどです。そうすると、上記ケースでは、歩行者の損害は100万円であるのに対し、歩行者の負担額は110万円ですから、歩行者の過失が10%にすぎないのに歩行者が四輪車に10万円を支払う結果になります。

ドライブレコーダーが証拠で過失割合が変わることもある

四輪車にドライブレコーダーが設置され、事故状況が記録されているケースでは、その写真や映像が客観的な証拠となります。

そのため、写真や映像に記録されている事故状況に沿った形で、被害者の過失割合(正確には過失相殺率)が判断されることになります。
民事裁判は客観的な真実を追求する場ではなく(裁判官は神様ではないため、客観的な真実が何かは分からないからです)、より有利な証拠を提出することに成功した側の主張が真実と認められてしまいます。
そして、自動車損害賠償保障法3条は、被害者保護のため、自動車の運転手に対して被害者に過失があることの立証責任を課しています。

そのため、被害者の過失割合(正確には過失相殺率)について被害者と加害者の言い分が異なり、どちらの側にも決定的な証拠がなかったときは、裁判所は、被害者の言い分に沿った形で事実認定をすることになります。したがって、事故状況が記録されているドライブレコーダーの写真や映像は、被害者の過失割合(正確には過失相殺率)を立証し、自動車の運転手の賠償責任を減らすための極めて重要な手段といえます。

交通事故直後の現場写真は重要な証拠となる

交通事故の事故状況が争いになったとき、被害者と加害者の供述は決定的な証拠とはなり得ません。なぜなら、どちらも自分に有利な内容を供述しようとする類型的な危険性がありますし、人間の記憶は極めてあいまいであり、悪気がなくても自分に有利なように思いこみ、間違ったことを真実として記憶してしまっているケースも珍しくないからです。

これに対し、交通事故の直後に現場の状況を撮影した写真は、間違った記憶によって汚染される可能性がない客観証拠として信用性が高く、後日、極めて重要な証拠となる可能性があります。
したがって、交通事故が発生した場合は、自分と相手の身の安全を確保した上で、余裕があれば、様々な位置や角度から、できる限り多くの写真を撮影しておくべきです。

過失割合の加算・減算になる要素とは

冒頭でご紹介した「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」は、基本となる過失相殺率を設定し、事故態様ごとに様々な修正要素を具体化し、その修正要素に一定の数値を与え、基本となる過失相殺率と修正要素を組み合わせることで、最終的な過失相殺率が計算できるようにしています。

例えば、先ほどのケース(歩行者が青点滅信号で横断歩道の横断を開始し、赤信号で進入した四輪車と横断歩道上で衝突したとき)の基本となる過失相殺率は「10」と記載されています。これは歩行者の損害賠償金の10%が減額されるという意味です。道路交通法施行令2条が歩行者は青点滅信号で道路の横断を始めてはならないものと規定していること、歩行者にも左右の安全確認義務があることから、基本となる過失相殺率は「10」とされています。

ただし、歩行者が幼児・児童・高齢者・身体障害者の場合は、判断能力や行動能力が低いことから、これらの者を社会的に保護するため、歩行者の過失相殺率は「-5」と記載されています。また、歩行者が集団横断しているときは、車から発見することが容易ですから、歩行者の過失相殺率は「-5」とされています。
したがって、小学生が青色点滅信号時に横断歩道の集団横断を開始したときは、基本となる過失相殺率10%に-10%(-5%×2)の修正要素を組み合わせることになり、結局、歩行者の過失はゼロとなります

このように、被害者の過失割合(正確には過失相殺率)は、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」から該当事例を探し、基本となる過失相殺率を設定し、修正要素と組み合わせて計算するという複雑な過程をたどりますので、法律的な専門知識を要するものです。事故に有利な事情を見落とさないためにも、弁護士に相談したほうがよいでしょう。

当事務所では高度なリーガルサービスを提供できる態勢を整えており、事故後どのタイミングからのご相談であってもトータルサポートが可能です。
不公平による不利益を被る前に、お気軽にまずはご相談ください。

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