肘関節に可動域制限がある場合、後遺障害等級とその認定はどうなるのか

交通事故で怪我をし、肘の部分の骨折や脱臼により、肘関節が曲がらなくなったり、肘関節内に人工物を入れなければならなくなったりすることがあります。

では、肘関節に可動域制限がある場合、後遺障害等級とその認定はどうなるのでしょうか。

その後遺障害等級としては「8級6号」「10級10号」「12級6号」が考えられます。

これらの等級が認定されるためには「肘関節に交通事故による器質的損傷(肘関節の可動域制限の原因となる外傷)が認められる」「肘関節が曲がらない」「人工関節や人工骨頭を挿入する」など可動域制限が医学的に証明される必要があります。

以下においては、肘関節の可動域制限の後遺障害等級とその認定はどうなるのかについて、説明することとします。

肘関節の仕組み

構造

肘関節は、上腕骨(肩から肘までの骨)と、橈骨(親指側の骨)と尺骨(小指側の骨)と呼ばれる前腕の2本の骨から構成されています。

肘関節は、腕尺関節、腕橈関節、近位橈尺関節の3つの関節からなる複合体です。

運動

肘関節の主要運動(日常の動作にとって最も重要な動き)は「屈曲(腕を曲げること)」「伸展(腕を伸ばした状態から反らせること)」です。

肘関節には、参考運動(日常の動作で主要運動ほど重要でない動き)がありません。

可動域制限の測定方法

肘関節の可動域は、日本整形外科学会及び日本リハビリテーション医学会「関節可動域表示ならびに測定方法」における「関節可動域の測定要領」に基づいて、医師が角度計を使用して5度刻みで測定します。

したがって、肘関節の可動域は、自動値(本人が自発的に曲げた角度)ではなく、原則として健側(障害のない側)の可動域と比較して、他動値(医師が手を添えて曲げた角度)で測定されます。

肘関節の可動域は、屈曲と伸展を一つの運動と考えて、両方の可動域角度を合計し、左右の患側(障害のある側)と健側を比較します。

左右とも患側の場合は、参考可動域角度(正常値)との比較となります。肘関節の主要運動と参考可動域角度(正常値)は、次のとおりです。

主要運動 屈曲 伸展
参考可動域角度(正常値) 145°

可動域制限の原因となる外傷

交通事故により、直接打撲したり、手を付いたりしたときに発生する「上腕骨遠位部骨折」、転倒し、曲げた状態で肘を打ったりしたときに発生する「肘頭骨折」、伸ばした腕から落ちる転倒などで発生する「肘関節脱臼」などの怪我を受傷すると、肘関節に可動域制限が現れます。

後遺障害等級

肘関節の可動域制限の後遺障害等級は、次のとおりです。

等級 後遺障害
8級6号 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
10級10号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級6号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

8級6号

「関節の用を廃したもの」とは、下記の①ないし➂のいずれかに該当するものをいいます。

①関節が強直したもの

「関節が強直したもの」とは、関節の完全強直又はこれに近い状態にあるものをいいます。「関節の完全強直」とは、関節が全く動かない状態をいいます。

「これに近い状態」とは、関節可動域が、原則として健側の関節可動域角度の10%程度以下に制限されている状態をいいます。「10%程度」とは、健側の関節可動域角度の10%に相当する角度を5度単位で切り上げた角度とされています。

例えば、健側の左肘関節(屈曲:140度、伸展:5度)の可動域角度が145度だった場合、145度の10%は14.5度となります。14.5度は5度単位で切り上げて15度とします。

患側の右肘関節の可動域角度が15度以下に制限されていれば、健側の可動域角度の10%以下に制限されているといえ、8級6号に認定されます。

➁関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの

「完全弛緩性麻痺」とは、末梢神経の損傷などにより弛緩性麻痺となり、自動では関節を完全に動かせなくなった状態をいいます。

「これに近い状態」とは、他動では可動するものの、自動では関節の可動域が健側の可動域角度の10%程度以下となったものをいいます。

この場合の「10%程度」については、上記の「関節が強直したもの」の場合と同様です。

➂人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

10級10号

「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、下記の①ないし➁のいずれかに該当するものをいいます。

①関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

例えば、健側の左肘関節(屈曲:145度、伸展:5度)の可動域角度が150度、患側の右肘関節(屈曲:60度、伸展:0度)の可動域角度が60度だった場合、患側の可動域角度60度が、健側の可動域角度150度の1/2の75度を下回っているので、健側の可動域角度の1/2以下に制限されているといえ、10級10号に認定されます。
➁人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されていないもの

➁については、可動域の制限を条件としていませんので、人工関節や人工骨頭にした場合には、最低でも「関節の機能に著しい障害を残すもの」に該当することになります。

12級6号

「関節の機能に障害を残すもの」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されているものをいいます。

例えば、健側の左肘関節(屈曲:145度、伸展:5度)の可動域角度が150度、患側の右肘関節(屈曲:100度、伸展:0度)の可動域角度が100度だった場合、患側の可動域角度100度が、健側の可動域角度150度の3/4の112度を下回っているので、健側の可動域角度の3/4以下に制限されているといえ、12級6号に認定されます。

後遺障害等級の認定

肘関節の可動域制限の後遺障害等級が認定されるためには、肘関節に交通事故による器質的損傷が認められ、肘関節が曲がらなくなったり、人工関節や人工骨頭の挿入といった可動域制限が、医学的に証明される必要がある、ということになります。

そして、そのためには、X線やMRI等の画像を準備し、既往症と診断されないように後遺障害診断書の作成にも注意を払うことが大切になるのです。

まとめ

交通事故によって肘関節に外傷を負った場合、その可動域制限の後遺障害等級としては「8級6号」「10級10号」「12級6号」が考えられます。

それらが認定されるためには、肘関節に交通事故による器質的損傷が認められ、肘関節が曲がらなくなったり、人工関節や人工骨頭の挿入といった可動域制限が、医学的に証明される必要がある、ということになります。

肘関節のことで後遺障害の申請をお考えの方は、是非、交通事故に精通している当事務所にご相談ください。

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