交通事故の裁判外紛争処理機関(ADR)とは何なのか

代表弁護士 津田 岳宏 (つだ たかひろ)

任意保険会社との示談交渉が決裂した場合、被害者として法的手続を検討することになりますが、交通事故損害賠償請求事件においては下記のとおりいくつかの裁判外紛争処理機関(以下「ADR」といいます)が存在しており、訴訟提起による以外に選択し得る手続があります。

ADRで交通事故の紛争を解決できれば、費用も節約することができ、被害者にとっても望ましいことです。

では、交通事故の裁判外紛争処理機関(ADR)とは何なのでしょうか。

ADRとは、Alternative Dispute Resolutionの略で、訴訟以外で交通事故の紛争解決を目的とする機関の総称です。

以下においては、ADRについての一般的説明をした上、交通事故を扱う主なADRについて、説明することとします。

一般的説明

ADRには、被害者本人によって損害額が比較的少額な事件が申し立てられることが多いとされます。

ADRによる紛争解決を選択するメリットとしては、費用が低廉であること(下記のADRを利用するに当たっては、いずれも手続を利用すること自体に費用はかかりません)、任意保険会社が示談交渉の中では裁判(弁護士)基準での賠償に応じないときでも、ADRではその基準に沿った和解案が示されることが多いこと、厳格な立証を要しないので、立証資料が多少薄い損害費目があっても場合によっては認定されることがあること、一般的には比較的早期の解決が期待できることなどが挙げられます。

他方、ADRによる紛争処理は、その手続の性質上、最終的な解決に至らない場合があり、このような場合に改めて訴訟提起することとなると、かえって時間がかかることに留意する必要があります。

なお、ADRによっては扱える事案の範囲に限定がありますので、この点は注意を要します。

公益財団法人日弁連交通事故相談センター

公益財団法人日弁連交通事故相談センターは、全国各地の弁護士会内に置かれており、全て弁護士が直接相談を担当しているのが特色です。

また、訴訟あるいは相手方との示談交渉の代行を弁護士に依頼したい人には、適任の弁護士を紹介してくれますし、資力に乏しい人には法律扶助が受けられるようあっせんも行っています。

さらに、相談所の中には、自賠責保険金請求手続の代行もしている所もあります。

同相談センターでは、無料で弁護士の法律相談や示談あっせんを受けることができます。

法律相談は、面接相談が原則ですが、電話相談(10分程度)に応じている所もあります。相談所によって、相談日、受付時間が異なりますし、先着順、予約制をとっている所もあります。1回の相談時間は30分程度です。

示談あっせんの申込みに限らず、損害額の算定の仕方や過失割合のことなど、交通事故の損害賠償に関することなら何でも相談できます。

示談あっせんによって担当弁護士から示されたあっせん案は、任意保険会社等に対する拘束力はなく、一部の自動車共済を除き、任意保険会社を拘束する解決案を提示する審査制度もありません。

なお、示談あっせんが不調となった場合、全労済ほか8共済が当事者の一方の示談代行をしているときは、審査手続に移行することができ、上記関係共済は審査手続において審査委員会が示した評決案を尊重し、事案の解決に努めることとされています。

公益財団法人交通事故紛争処理センター

公益財団法人交通事故紛争処理センターの目的は、交通事故の関係者の利益の公正な保護を図るため、交通事故に関する紛争の適正な処理に資する活動を行うことであり、この目的を達成するため、次の8つの事業を行っています。

①交通事故に関する、弁護士による無償法律相談 
➁交通事故に関する、弁護士による和解の無償あっせん
➂交通事故に関する紛争解決のための審査
以下略

同処理センターでは、全国の主に大都市にある相談所において、無料で法律相談や和解あっせんを行っています。

和解あっせんとは、同処理センター相談担当弁護士が被害者と加害者を代行する任意保険会社との間に立って和解による紛争解決を図る手続をいいます。

あっせんによる和解が成立しない場合に、被害者が審査を申し立てると、3名の審査員(大学教授、元裁判官、弁護士など)で構成される審査会は、当事者双方の言い分を聞き、また担当弁護士から、和解あっせんの経過を詳しく聞き、裁定を行います。

申立人被害者は、原則として裁定に拘束されませんが、相手方保険会社は裁定を尊重することとなっており、審査会の裁定は事実上の片面的拘束力を有します。

そんぽADRセンター

そんぽADRセンターは、正式名称を損害保険相談・紛争解決サポートセンターといい、保険業法に基づく指定紛争処理機関で、国の指定を受けた機関です。

ただし、同ADRセンターが取り扱う苦情や紛争の範囲は、日本損害保険協会との間で指定紛争解決機関に関する手続実施基本契約を締結した損害保険会社に関連するものに限られます。

同ADRセンターは、損害保険会社とのトラブル(損害保険会社の対応が納得いかない、賠償額の算定に納得がいかないなど)が解決しない場合の苦情の受付や損害保険会社との間の紛争解決の支援(和解案の提示等)を行っています。

保険会社に対する苦情申立てがあった場合には、各保険会社に苦情の解決を依頼し、解決できなかった場合には、同ADRセンターにおいて、損害保険全般に関する苦情や紛争を中立・公正な立場から問題解決を図っていくというものです。

一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構

一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構は、自賠法に基づく指定紛争処理機関であり、自賠責保険・共済の保険金又は共済金の支払で、被害者や保険・共済の加入者と保険会社・共済組合との間で生じた紛争について、調停自賠責保険・共済からの支払に関する紛争について、調停を行っています。

同機構による調停は、自賠責保険の保険金等の支払に係る紛争のみを対象とし、同機構への申請は1回限りである点に特色があります。

同機構は、紛争処理の申請があると、公正中立で専門的な知識を有する弁護士、医師、学識経験者からなる紛争処理委員会を開催し、申請についての審査を行います。

調停の主な内容は、自賠責会社がした後遺障害の等級、有無責判断及び重過失減額に関する紛争です。同機構の調停は、話合いではなく、書面審査です。

調停の結果は、自賠責保険の支払に関する部分について、自賠責保険会社や共済側は約款等でこれを遵守することとしており、事実上の片面的拘束力を有します。

まとめ

交通事故に遭った場合、加害者や保険会社と示談交渉をして賠償問題の解決を図りますが、その話合いが決裂してしまうこともあります。そのようなときに、各種のADRを利用し解決できれば、被害者にとっても望ましいわけです。

しかし、被害者は、交通事故の解決策として、各種のADRを利用する方法があることには思い及ばないものです。弁護士であれば、事故の事案に応じて、訴訟以外に、各種のADRの手続を選択することも考えていただけます。

交通事故の賠償問題でお悩みの方は、是非当事務所にご相談ください。

代表弁護士 津田岳宏(つだたかひろ)/昭和54年生/京都女子大学付属小学校卒業/東大寺学園中・高等学校卒業/京都大学経済学部卒業/平成19年9月弁護士登録/平成26年6月京都グリーン法律事務所を設立

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